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リ ン ク 元

筆者はポルシェ「918スパイダー」を絶賛し、フェラーリ「ラ フェラーリ」については、あらゆる角度から判断して、すばらしいイタリア車になるだろうと言ってきた(たとえフェラーリ ラ フェラーリという車名がレコードのシングル盤の音飛びのように聞こえたとしても)。そしてこの2つのハイパーカーの中間に位置するのが、圧倒的な存在感を放つ英国車、マクラーレン「P1」だ。  ドライバーのためのスーパーカーとして考えるなら、P1はダイナミクスや敏捷性の面で918スパイダーより優れている。一方で、918はP1に匹敵する驚異的なスピードと並はずれた燃費を両立させる性能を秘めた奇跡のクルマだ。両車の値段は100万ドル(約1億円)前後。厳密に言えば、918スパイダーが84万5,000ドル(約8,670万円)P1が115万ドル(約1億1,800万円)だが、このクラスとなると数十万ドルの差など微々たるものだ。これらのクルマなら、シングルシートでオープンホイールのようなクルマを運転せずとも普通のドライバーが公道でF1マシンに近い走りを体験することができる。P1のテスト用プロトタイプNo. 5で念願の試乗を行うために、ロンドンの南にあるダンスフォールド飛行場を訪れた時、筆者がどれだけ興奮していたか想像できるだろう。この『トップギア』のテストトラックに来る時は決まって雨が降り続いていたが、ありがたいことに今回の試乗では暖かい気温と晩冬の輝く陽光に恵まれた。サーキットのそばにあるマクラーレンの仮設ルームに到着すると、筆者が運転する予定の甘美で燃えるような黄色のP1はマクラーレンの顧客が試乗中だった。

この顧客の男性と美しい奥方は、彼ら自身によるドライブに加え、マクラーレンのチーフテストドライバーであるクリス・グッドウィン氏とマクラーレン「MP4-12C GT3」のドライバーを務めているダンカン・タピー氏による強烈なラップを含めた数周の試乗をちょうど終えるところだった。この夫婦と話した時2人はまるで10代の若者のように舞い上がっており口を耳から耳まで伸ばすほどの笑顔を浮かべていた。彼らはドバイやモスクワ、シンガポール、ビバリーヒルズからやって来たのではなくオハイオから来たという。私たちの金持ちに対する固定観念は改めた方がよさそうだ。

まずはP1を走らせた感想から述べるべきだが、その前に、同車がドライバーに何を提供しているのか説明する必要がある。P1で採用された”ガソリンと電気”によるプラグインハイブリッドのパワーユニットは、これまでのMP4-12Cと同様に、アルミ製フレームとカーボンファイバー製モノセルを組み合わせた車体に搭載され、リカルド社によって組み立てられた「M838T」型3.8リッターV型8気筒ツインターボを使用する。ただしP1ではすべてに改良が加えられ、パフォーマンスの改善が図られている。

マクラーレンによれば、P1の乾燥重量は1,395kgで、これは最高出力570hpのフェラーリ「458 イタリア」とそれほど変わらない。P1が搭載する電気モーター、リチウムイオンバッテリー、そのほかEV関係の補器類が車両重量の中で占める割合は204kgほどだ。リア・ミドシップに搭載されたコンパクトなV8ツインターボエンジンは単独で最高出力727hp(MP4-12Cは616hp)、最大トルクは73.4kgm(MP4-12Cは61.2kgm)を発揮する。これらの数値だけでもよだれが出るほど魅力的だが、それに加え、4.4kWhのリチウムイオンバッテリーが電気モーターを駆動させ、さらに176hpと26.5kgmのパワーを生み出すEモードでは電気モーターのみを使用して最大12kmほどの距離を走らせることが可能だという。

電気モーターから提供されるパワーは、Eモードを除くすべてのモードでガソリンエンジンと組み合わせることができそれにより最高出力は903hp、最大トルクは91.8kgmにまで高められる。このパワートレインには F1マシンで使用される KERS(運動エネルギー回生システム)が応用されており、ステアリングホイールに設置された赤い「IPAS」ボタンを押すことで、フルスロットル時に作動する。IPASとは”Instant Power Assist System(瞬時にパワーを補助するシステム)”の略で、名前の通り、使える電力を瞬時に供給し、長い直線でのパフォーマンスに貢献する。

 

この短い試乗で筆者が気づいたことは、もしあなたがエキセントリックな種類の人間であるならば、P1は毎日運転するドライバーにとってパーフェクトなクルマだということだ。P1は究極のスーパーカーでありながら、すべてをノーマルに設定するとMP4-12Cと同じ快適さが得られる。とはいえ、P1のステアリングのレスポンスがMP4-12Cと比べて鋭いことにすぐに気づく。ステアリング・ギア比はロック・トゥ・ロックが2.2と、MP4-12Cの2.6と比較しても超クイックだ。ステアリングの動きは軽くて操作し易く、曖昧な感じはまったくしない。舗装のよくない路面を適度な速度で走らせてみると、ピレリ製「Pゼロ・コルサ」のタイヤ(フロント19インチ、リア20インチ)が組み合わされたパッセンジャーセルとダンパーのチューニングは、MP4-12Cよりも堅いというのが全体的な印象だ。この頃には筆者もコースの状態を把握していた。ダンカンはその横で丁寧にサポートしてくれていたが、筆者の探求にひどくうんざりしていたのは明らかだった。

ノーマルモードを卒業してスポーツモード、それからトラックモードにすると、目一杯のコーナリングで強い重力加速を体感しようとしている自分に気が付いた。マクラーレンによれば、P1の横加速度は最大2.4Gで、スキッドパッドでのテストでは軽く1.8Gを維持していたという。これは本当に驚異的な数字だ。ダンスフォールド飛行場の未舗装のコースに再び慣れたところで、エンジンと電気モーターのによるブーストを同時に働かせ、さらにスピードアップすることにした。この時、自分の運転が完璧であると錯覚してしまうほど、P1は無限の可能性を感じさせてくれた。

 

【基本情報】
エンジン: 3.8リッターV型8気筒ツインターボ+電気モーター
パワー:最高出力903hp/最大トルク91.8kgm
トランスミッション:7速DCT
0-60mph(推定):2.6秒
最高速度:350km/h(電子制御リミッター付き)
駆動方式:後輪駆動
車両重量:1395kg
座席数:2
荷室容量:120ℓ
燃費(推定):12km/ℓ(複合モード)
ベース価格:115万ドル(約1億1800万円)